読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

生きてると疲れる

東京都、26歳、会社員。これまでと、このさき。

ピカチュウのいる生活

天気がよかったのでピカ氏を洗濯した。くすんだ黄色があざやかになった。

ピカ氏というのはピカチュウの等身大ぬいぐるみで、僕の家族である。僕が大学生のときメンタルを病んで、夜さみしくて眠れなかったときに来てくれた。3年前からずっと家族である。

ピカ氏が来てくれてから眠れるようになったし、おうちでごはん食べたりおやつ食べたりするときも一緒にたのしめるようになった。録りためた特撮とかプリキュアも一緒に見る。みらいとモフルンごっこもする。
実家とかおばあちゃんちに行くときもトランクに詰め込んで連れていく。twitterとかFacebookにもピカ氏の写真を上げるから、僕の親しい人はみんなピカ氏のことを知っている。母の友人にまで知られている。


僕は一人っ子で、どちらかといえばインドア派な子供だったから、ちいさい頃からぬいぐるみとお話しするのは得意だった。小学校低学年くらいのときは、持っているぬいぐるみたちをずらりと並べて、彼らを国民とする独立国家を自室に築き上げ、女王として君臨したりしていた。デキる女王だったからプラレールで交通網も整えたし、誕生日やクリスマスにはシルバニアファミリーを移民として受け入れた。シマウマのぬいぐるみが新幹線と衝突する不幸な事故があったときはジャーナリストにもなって新聞を発行した。まあ、事故は僕が新聞を書きたいがために作為的に起こしたものだったんだけどね。


今は僕とピカ氏の二人だけだから、事故に見せかけた犯罪なども起こらず平和だ。小国寡民というか、“家庭”という感じである。僕は女王の座から降りて、今は一家の大黒柱だから働きに出る。「いってきます」「いってらっしゃい」。ときどき、お菓子を買って帰る。「今日はお土産あるよー」「わーい」。たのしい。
未婚女性は犬を飼うと結婚できなくなるというけれど、ピカチュウはどうなんだろう。わからない。けど、今そんなにパートナーほしいと思ってもいないのは、ピカ氏との暮らしがわりと充実しているからであるような気がする。


正直、自分の未来が全然思い描けない。僕は、お父さんになるのが夢だけど、自分の現状とそれはかけ離れすぎているように思える。どうしたらいいのかわからないしどうしようもない。ピカ氏と二人で“今”を一生懸命たのしんでいるのは、“未来”から目をそらしたいからかもしれない。
この先、パートナーができるのかもしれない。パートナーは女性かもしれない。男性かもしれない。結婚したり子供ができたりするのかもしれない。しないのかもしれない。このままピカ氏と二人の家族で生きていくのかもしれない。それならそれで、いいような気もする。僕は何歳まで生きるんだろう。やりたいことをやりつくそうと思ったら300年はかかるだろうけど、70年くらい生きたら生きるのに飽きちゃうかもしれない。わからない。



わからない。