生きてると疲れる

東京都、26歳、会社員。これまでと、このさき。

父の日だった

人事異動があって、職務内容が変わって、パソコンの画面に向かって仕事をする時間がすごく増えたら目の疲れがひどくなって、まいったなあと思っていたのだが、ある日、上司のメガネのレンズが紫色にあやしく光るのを見て、そういえばPC用のメガネと言う文明の利器があったのだと気付き、早速休みの日に買いに行った。

JINS SCREEN。ブルーライトを38%カットしてくれるという触れ込みのそのレンズは、ぱっと見わからないくらい薄茶色がかっていて、ようするに普段使いしやすいサングラスといった風なものだった。

それについてきたのが、父の日割引券である。

父の日には一緒にメガネを買いに行こう!と書いてあるそれを見て、僕ははじめて父の日が近づいていることに気づかされたのだった。



“父の日”って、なんか、影が薄い。
スーパーだって花屋だって雑貨屋だって、母の日が近づいてくると母の日の贈り物コーナーを作るのに、父の日コーナーはあんまり作られない。父の日なんてないみたいに、母の日ギフトの売れ残りの半額セールとかやってる。


僕も今までの人生において、父の日を、わりとないがしろにしてきた。

幼稚園児のときは、やれ母の日だ父の日だ敬老の日だって言っては工作させられたから、手製のくだらない何かをプレゼントしていたはずだ。けど、小学校に上がって以降、父の日に何かをプレゼントした記憶がない。母には母の日にちょっとしたお花とかお菓子とかをプレゼントしたことがあったが、父にはない。

誕生日と、ヴァレンタインと、父の日とクリスマス。“父にプレゼントをする機会”っていうのは年に何度かあって、でも強制性はないからあげなくても全然いいみたいな感じだった。だから僕はヴァレンタインにだけはチョコレートとポストカードを毎年あげていたけど他はほとんど父には何もあげていなかった。ヴァレンタインは、お返しがあるからね。

そもそも、父はあまり家にいなかった。仕事も忙しいときは忙しそうだったけど、そうでないときはオタクだから趣味に忙しかった。たまに家にいるかと思うと、録り溜めたアニメや特撮やアイドルやお笑いの番組を見るのに忙しくしているのだった。

「亭主元気で留守が良い」なんて言葉があるが、それを地で行っている家庭だった。


だから、なんとなく、血も繋がってるし、20歳までは同じ家に住んでたし、趣味だって被ってる部分が少なくないのに、なんとなく父とは疎遠だった。

その父に、今年は、何かあげたいなって思った。
たぶん、父方の祖父が先日死んでしまったことによって沸き起こった気持ちであると思う。父が死んでしまう前に、父のこと好きだよって伝えておかなきゃって義務感にも似たものを感じていた。なんとなく疎遠ではあったけど、よくできた父親だとは思わないけれど、父は僕のオタク的人生のロールモデルになっているし、一番尊敬するオタクだと言っても過言ではないのだ。


それで、僕は、何をあげようかさんざん迷ったあげく、お金もないのでポストカードに簡単なメッセージを書いて、JINSの割引券を同封して、ポストに放り込んだ。



ポストカードは、東急ハンズで買った。

東急ハンズは店のあちこちに父の日コーナーを作っていたが、ポストカードのコーナーも例外ではなく、父の日仕様のカードがたくさん並んでいた。
見ると、“スーツにネクタイ”と“ビール”のデザインされたものが非常に多かった。
ビジネスとアルコールだけが父ではないはずだし、子供だって「働いてるお父さんが好き」とか「お酒が飲めるお父さんが好き」とかではないはずなのに、イマドキ多様性の時代なのに“父”のイメージのなんと画一的なことか!
僕はオタ活してるときの父が一番好きだし一番輝いていると感じているから、そんな父の日コーナーを一瞥してその後ろに回り込んだ。いつも通りのポストカード売り場。そこで、僕は父へのプレゼントとして適していると思える一枚を手に入れた。

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これである。
父、超強そうでしょ。


メッセージには「いつも愛と心配をありがとう。今はお金がないので大したものは贈れません」みたいなことを書いた。来年はもうちょっとマシなプレゼントを贈りたい。



ちなみに、ブルーライトカットのメガネの効果はすごくて、仕事中に目薬をさす回数が5分の1に激減した。パソコン仕事の人は父へのプレゼントをおろそかにしてでも買うべき。