生きてると疲れる

東京都、26歳、会社員。これまでと、このさき。

友達が、結婚する

「お知らせがあります!」
気の置けない仲間達の飲み会にて、隣の席の友人が急に真面目な顔をして宣言した。
「来年、入籍します!」


みんなびっくりして、それから祝い事のお知らせだったことに気づいて、手を叩いたりおめでとうと言ってみたりするなかで、僕は自分の正義──ジャスティスのために発言せねばならぬと感じて、言った。
「今の婚姻制度は、入籍じゃないよ。籍に入るんじゃなく、新しい戸籍を作るんだよ」
彼女は答えた。
「知ってるよ♪二人の戸籍が作られるんだよねっ」
それを聞いて、安心した僕の口から、自然に言葉が出てきた。
「結婚、おめでとう」


友達が、結婚する。

思ってもみないことだった。僕の友達は結婚しそうにないやつばっかりで、するとしても、そういう話題が出るのはアラサーとかアラフォーとかになってからなんだとばかり思っていた。正直、僕の友達に関しては結婚なんかするよりアカデミー賞でも取るほうが現実味がある。


恋人が仕事の都合で引っ越すのについていくとかなんとか、そういう話だった。そんなのって、21世紀になってもあるんだなあって、思った。隣に座っている彼女が、妙に遠くのものに感じられた。とりあえず、「引っ越す前に女子会しようね!!!!」と声をかけた。


元々、結婚願望の強い子だった。だから僕は、そのうち「私は結婚したいのにカレにはその気が全然なくて……」みたいな話を聞かされるようになったりするんだろうなあって、なんとなく想像してた。それなのに、それなのに。彼女の婚約──エンゲイジは光よりも早かったのだ。

“結婚”。
結婚するってどんな感じだろう。
「結婚したら一人前」的な価値観は、いまだに滅びていない。それについては滅びるべきだと思うけれども、ある程度しっかりした人じゃないと“結婚”なんてできないんじゃないかとも思う。だって、他人と一緒に住んで、お財布もひとつにして、生きていくなんて絶対難しいこと多いよ。難しいことしかないよ。相手の親族との付き合いなんかも出てきたりするし、新しく子供が産まれてきたりもするんだよ。やばさしかないよ。

大人になったら、もっとしっかりした人間に自然になるんだと思ってたのが間違いだったのと同じように、結婚する人だって案外普通の人であるのかもしれない。“結婚”は僕が考えるほど難しくなくて、普通の人でもなんとかなるようなものなのかもしれない。けれども、僕には、そこに飛び込む勇気はないなって、思う。すくなくとも、今は。


なんとなく気になって、聞いてみた。
「ブーケトスはするの?」
「晴れたらするよー」
そうか、じゃあ、晴れるといいな。
幼い頃、叔母の結婚式に行ったとき。ブーケトスの意味もわからずに参加して、ブーケが取れなかったので泣いたあの夏のことを思い出す。


結婚したいかと問われれば、わからないとしか言いようがない。結婚したいような人と出会えたら素敵だなとは思うし、そうしたらその人と結婚したいと思うのかもしれないけれど、そうでないなら別に、僕の人生に“結婚”は要らない。

でも、誰か、人生を共に歩んでくれる人がほしいとは思う。子供作ったり育てたりしたいし、今の私には頼れる人が親しかいないし、親は高い確率で僕より先に死ぬだろうし。


だれか、だれかに、僕の人生の重要な役を担ってほしい。そう思う。
それが、“結婚願望”だというのなら、そうなのかもしれない。

ブーケ、取りたいな。取れたら、いい人とご縁ができる気がする。


友人の結婚式には、大学の卒業式に着たオーダーメイドのチャイナドレスで参加するつもりだ。
だから、僕が今やるべきことは、やはりダイエットなのである。チャイナドレス作ったときよりすこし太ってしまっているからね。

花嫁の、結婚することを祝い、その後の成功と幸福を祈るためにも。とにかくダイエット。がんばりたい。