生きてると疲れる

東京都、26歳、無職、ADHD。これまでと、このさき。

ロリ服と僕

オタクのファッションは、四種類に大別される(と僕は考えている)。
よくいるのが“無関心型”。服に関心がなく、選ぶ基準があるとすれば着心地とか着脱の楽さなどの機能性。なぜかチェックシャツをよく着ている。
目立たないのが“埋没型”。オタクであることを隠したいがために非オタクに擬態している。
目立ってしまうのが“コスプレ型”。私服がコスプレっぽい人。憧れのキャラクターの服装を真似る、中二病のまま大きくなったような人が多い。
そして最後に紹介するのが“服オタク”。服そのものが趣味の人。服が大好きで服に詳しいオタクである。

僕の私服は“コスプレ型”だ。カラーのニーハイソックスを愛用しているのは夏みかんの真似だし、ストールは天道総司だし、中折れ帽は言うまでもなく仮面ライダーダブル。ついでに言うと、ファッションではないが、ぼくが別れ際に「じゃ!」と言って片手を挙げるのはサトエリキューティーハニーの真似である。


でも、ロリィタに興味を持ったのは特撮の影響じゃなかった。

Twitterだ。


上京する少し前に始めたTwitterでは、たくさんの出会いがあった。僕は東京での、いろいろな人との出会いを夢見て、いろいろな人をフォローした。特撮が好きな人、セクシャルマイノリティの人、それから、女装の人。僕は女装男子が好きだからたくさんの女装男子をフォローした。僕自身は女体持ちで性自認が不定性で女装を好む、言わば女装Xなのだけれど、女装界隈は僕を暖かく迎え入れてくれた。

女装界隈にはいろんな人がいた。僕みたいに性自認が不安定な人もいたし、美しいものが好きな人もいたし、鉄道オタクもいたし、ヤリチンもいたし、童貞もいたし、ゲイもいたし、服オタクもいた。いろんな人がいろんな理由で女装していた。
そんな界隈で相互フォローになったフォロワーさんの中に、ロリィタファッションを嗜む方がいた。その美しさに僕は衝撃を受けた。

その頃は、まだ、ロリィタは画面のむこうの存在だった。


大学生のとき、はじめて(記憶のない幼い頃に行ったことがなくはないのかもしれないが)原宿に行って、はじめてロリィタブランドのお洋服に、実際に出会った。美しかった。「ほしい!」衝動的に、そう思った。
しかし、僕の当時の財力では、その価格の高さに手が届かなかった。それ以上に、ロリィタファッションをはじめることへのハードルの高さをも感じていた。あのフォロワーさんみたいに、美しくなれる自信が、なかった。
結局そのときは諦めて、しかし、後でやっぱりもう一度見たくなって、何日か後に同じお店に行ってみたけれど、その服はもうなかった。ちゃんと探せばあったのかも知れなかったけど、買うつもりもないのに探す気にもなれなくて、僕は、再び、諦めた。

このとき諦めたことを、僕はずっと後悔することになる。
また素敵な服に出会いたくて、ときどきロリィタブランドのお店の前を通りすがりに行ったり、ブランドのウェブサイトを見たりしたけど、あのとき受けた衝撃を上回る出会いはなかったのだ。


そんな僕であるが、この秋、新宿マルイアネックスで、ついに出会ってしまった。
衝撃が走った。めちゃくちゃかわいいジャンパースカート。
これは仮面ライダー響鬼一之巻を見たとき(そこから僕は特撮オタクとしての道を歩み始めることとなった)と同じ、運命を変えるかもしれない出会いだ。そう、直感した。

値段を調べた。およそ3万円だった。
迷った。今の財力なら買えると思った。しかし服、それもいつ着るのかよくわからない服に3万円は高すぎるとも思った。ジャンパースカートを買うならブラウスもいるし、パニエやドロワーズもいるし、出かけるなら靴やカバンもいるし、揃えたら10万はかかる計算になる。
10万!
僕には冬のボーナスでノートパソコンを買う計画があった。10万あったらパソコンが買える。

……パソコン買うのやめてロリィタにしちゃいなよ、と悪魔が囁いた。


僕は迷いに迷った。しかし、あまり時間がないこともわかっていた。服はほしいと思ったときに買わないと、容易には手に入らなくなってしまうんだ。

ロリィタファッションのフォロワーさんの美しさにはかなわないかもしれないけれど、僕には僕のファッションセンスがあるという自信が、この何年かでついていた。
26歳でロリィタを始めるのはいかがなものかという思いを、Twitterで見かけた黒柳徹子さんの、今が一番若いんだからやりたいことがあったら後で後悔しないようにやるのがよいという言葉が払拭した。
青木美沙子さんがテレビで言っていたという、ロリィタは偏見に負けない気持ちが大事だという言葉が、僕の胸に響いた。
ラフォーレ原宿がLINEで、今ラフォーレカードを作ると最大5000円分のショッピングチケットをプレゼントするという情報を寄越した。

何もかもが、僕の背中を押していた。
結局、僕は悪魔の囁きに従うことにした。


「ロリ服ほしい」とツイートしてみたら、友達と一緒に原宿に見に行くことになった。僕はラフォーレカードを作り、お目当ての、あの、ジャンパースカートを買った。その後一人で新宿や池袋も回り、そして今、ジャンパースカートとブラウスとパニエとドロワーズと靴とカバンが手元に揃っている。

あとは、着て、外へ踏み出すだけ。


“服”ってジャンルが深い沼なのは重々承知の上で。

26歳、ロリィタファッションはじめます。